保護者の皆さんは、何故、子供たちに習い事をさせるのでしょうか?明確な目的はありますか?インターネットで「子供の習い事の意義」で検索すると、本当にいろいろな意見があるなあと思います。
私にも子供がいるのですが、子供の習い事で重要視したことは「本物を学ばせる」ということでした。ジャンルはなんであれ、子供のお遊びのようなものではなく、「本物を!」ということにこだわりました。その理由は、その道を究めた師の背中を見て、ひとつのことをじっくり探求してもらいたいからでした。
広く浅くいろいろなことをやってみるということにも意味はあると思いますが、「ひとつのことを探求すること」の方が私にとっては重要なことです。試行錯誤し、自分なりの方法を見つけ出す、その過程に意味があり、模索するという過程は、今後どのようなことにも通用すると思います。いろんな分野の先生から効率的にやり方を学び、ある程度できるようになったら止めるのでは、子供の生きる力を養うことにはならないのでは、、、と思います。
そこで、ピアノやバイオリンなどの音楽系の習い事を通して、技術以外の何が学べるのか考えてみようと思います。
まず、教師と生徒の一対一でレッスンが進んでいくことが一般的ですので、大人とのコミュニケーションの仕方を学ばなければいけません。レッスンでは先生から様々な問いが投げかけられます。「そこで躓いたのは、どうしてだと思う?」「どの指使いだと、作曲家が意図したような音楽になる?」「どうして、作曲家はこの音をここで使ったのかな?」「この部分は何色に染めたい?」など、年齢に応じて質問の文言は変わりますが、どんどん質問されます。技術的なことや音楽的なことに関してのこのような問いに、自分なりの考えを言わなければいけません。「わかりません」は許されません、どんなに幼くても。
ですから、数学のように小さい頃からの基礎的な学びをおろそかにはできませんし、実際、楽譜を読む段階では数学的な思考が鍛えられます。同時にその基礎的な学びを論理的に説明する言語的な能力も鍛えられます。
このようなレッスンで、根気強く取り組む、試行錯誤することを楽しむ、自分の意見に責任を持つ(つまり根拠を持って自分の意見を他者に提示する)など、技術的な面だけでなく、これから生きていくのに必要な様々な能力が養われます。
「ピアノの生徒さんはお客さまです」という昨今の風潮のせいか「練習してこなくてもいいですよ」というのがスタンダードになりつつあるようですが、子供の習い事としてのピアノレッスンが、受け身の楽しさや単なる消費になっては、教育的意義がなくなってしまうのではないかと危惧しています。気楽で準備もいらず、工夫も苦労もいらず、その時間が終われば、後には何も残らないというのは、教える側としても寂しい限りです。
音楽を楽しむことが一番大切なことですが、生徒さんたちには、音楽を探求し、音楽を通して成長して欲しいと願っています。
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