フランス語の生徒さんに音楽大学で教鞭を取っていらっしゃる方がいます。彼女との話の中で、音楽の習得と語学学習がとても良く似ているという話題で盛り上がることがあります。
例えば、フランス語のディクテ(書き取り)ですが、音楽の聴音と良く似ています。ディクテは、読み上げられるテキストを聞き取り、性数の一致や発音されない語末などに注意しつつ書き出していくことなのですが、その際、聞き取れない部分があったとしても、前後の文脈を考えて意味を捉え、文法の知識を駆使して、聞き取れなかった箇所のかなりの部分を埋めることができます。
一方、聴音ですが、こちらは聞き取った音を楽譜に書き出す作業です。聴音も同様に、聞き取れなかった音があったとしても、前後の音楽の流れを聞き取り、和声学などの音楽理論の知識を駆使してかなりの部分を埋めていくことができます。
また、語学学習も音楽実践も座学だけでは到底身に付けることはできません。フランス語を使えるようにするには、文法習得や仏文和訳だけではなく、フレーズがスムーズに口から出て来るように、また自分の考えを文章にできなければいけません。そのためには練習の積み重ねが必要です。動詞を正しい人称、正しい時制に即座に対応させられるようになるのに、多くの実践の回数・時間が必要です。それと同時に、どんどん増え続ける最新の語彙やフランス語独特の言い回し、流行語、略語なども勉強し続けなければいけません。
音楽も同じで、音楽理論のような座学だけでは演奏できるようになりません。実践の積み重ねが必要です。たくさんの楽譜と向き合い、様々な時代の様々な作曲家の様式の作品を小さい頃から演奏して、様々な演奏様式を身につけていきます。演奏法というのは、楽譜のみから読み取ることは難しく、何年もかけて演奏しながら身体知として習得していきます。
当たり前ですが、音楽も語学も小さな学習の積み重ねが必要で、頭(理論や文法)で理解するだけでなく、何度も何度も練習を重ねて、心の成長と共に頭と身体を駆使して、時間をかけて徐々に習得していくものです。
音楽・語学双方ともに、「学問に王道なし」ということです。諦めずに楽しんで学んで欲しいと願っています。
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